19日の米株式相場は続伸。S&P500種株価指数は最高値を再び更新した。日本銀行の金融政策決定会合を通過し、市場の関心は20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)政策発表に移っている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5178.51 | 29.09 | 0.56% |
ダウ工業株30種平均 | 39110.76 | 320.33 | 0.83% |
ナスダック総合指数 | 16166.79 | 63.34 | 0.39% |
この日も大手ハイテク7社「マグニフィセント・セブン」の株価が堅調。その一角を占め半導体大手 エヌビディアは、前日に発表した人工知能(AI)コンピューティング向け次世代チップへの期待感を背景に買いが優勢となった。
エヌビディアCEO、データセンター投資で大型シェア獲得に期待
ゴールドマン・サックス・グループのストラテジストは米株式相場について、良好な成長と一段のインフレ正常化というマクロ経済的背景がある中で下げた場合には、投資家は押し目買いに動くべきだと指摘している。
クリスチャン・ミューラーグリスマン氏率いる同行ストラテジストは「株式のモメンタムが広範なリスク選好を下支えしており、米国の金利ショックがよほどのものでない限り、継続的な相場反転の可能性は限定的とみられる」とリポートに記した。
米株の上昇が行き過ぎかつピッチが速過ぎるかどうかを巡り、ウォール街では意見が分かれており、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストの間でさえも見解は異なる。
BofAのストラテジスト、米株相場の「陶酔感」巡り意見分かれる
BofAの米国株・クオンツ戦略責任者、サビタ・スブラマニアン氏はAIへの熱狂が相場をバブルの領域に押し上げている証拠はほとんどないと主張。好調な業績と底堅い米経済を改めて指摘し、株価には上昇余地があるとみている。これは同行のチーフ投資ストラテジスト、マイケル・ハートネット氏が 先週示した見解とは逆だ。
BofAが実施した最新のファンドマネジャー調査によると、AI関連銘柄がバブル状態にあるかどうかについて、投資家は40%が「はい」、45%が「いいえ」と回答し、意見が分かれている。
22Vリサーチが実施した調査によると、投資家の5割超は、S&P500種が次に10%動くのは上昇のケースだとみていることが明らかになった。FOMC会合後の市場の反応については「リスクオン」予想が37%、「リスクオフ」予想が33%、「ごくわずか・まちまち」予想が31%となっている。
国債
米国債相場は上昇(利回りは低下)。1300億ドル規模の20年債入札には強い需要が見られた。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.44% | -1.1 | -0.24% |
米10年債利回り | 4.29% | -3.2 | -0.73% |
米2年債利回り | 4.69% | -4.7 | -0.99% |
米東部時間 | 16時33分 |
FOMC会合では5会合連続での政策金利据え置きが予想されており、市場では四半期経済予測で示される金利予測分布図(ドット・プロット)の方に注目が集まるとみられる。最新の経済予測を通じ、依然として好調なデータが当局者の利下げ意向を後退させているのか、それとも年内3回の利下げ見通しに変化がないのかが示される。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のウィン・シン氏とエリアス・ハダッド氏は「米国債利回りとドルの上昇が続くかどうかは、タカ派的なシナリオが正当であると米金融当局が確認するか否かにかかっている」と指摘。「パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がタカ派的な筋書きから離れずにいれば、メッセージは一貫性を保ち、市場の反応は限定的なものになるだろう。その筋書きから外れてハト派的な発言をすれば、市場の反応はかなり激しくなるだろう」と語った。
FOMCは会合で、金融当局のバランスシートを巡って掘り下げた議論も開始する。
ウルフ・リサーチのクリス・セニェック氏は「バランスシートの計画を巡る発言は、利下げのタイミングに関する発言と同じぐらい重要だというのが当社の見解だ」とし、「5月の金融政策決定会合まで量的引き締め(QT)テーパリングの公式発表はないと予想されるが、その開始時期やペースがどうなるのか、そのあたりを見極めたい」と語った。
外為
外国為替市場では、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が4営業日続伸。円は主要10通貨で最悪のパフォーマンスとなった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1240.63 | 2.79 | 0.23% |
ドル/円 | ¥150.89 | ¥1.74 | 1.17% |
ユーロ/ドル | $1.0864 | -$0.0008 | -0.07% |
米東部時間 | 16時33分 |
円はドルに対して一時、前日比1.2%安の1ドル=150円96銭と、昨年11月16日以来の安値を付けた。日本銀行は同日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を含む大規模緩和策の 解除を決定したが、円に対する売り圧力が続いている。
日銀の植田和男総裁は、物価の動向次第では追加利上げの可能性もあり得ることを示唆した上で、経済を支えるために緩和的な環境を維持することが重要との見解を示した。
ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏(ロンドン在勤)は「将来の利上げについて、植田総裁から明確なシグナルは得られなかった」と指摘。その点では「ハト派的な利上げ」とみることもできると語った。同氏は、トレーダーの関心がFOMC政策発表に移る中、円は短期的に一段と下げる可能性があるとみている。
![Yen Tumbles Versus Dollar Despite BOJ Rate Hike | Rate decision was widely anticipated by markets](https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ixrEn4KS3qjc/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/60x-1.png)
インベスコ・アセット・マネジメント(シンガポール)のストラテジスト、デービッド・チャオ氏は顧客向けリポートで「日銀のハト派的な声明は国債購入の継続と相まって、米金融当局がいつ利下げを開始するかが明らかになるまで円が対ドルで弱いままであることを意味する可能性がある」と記した。
日銀正常化入りで早期利上げの思惑も、4月展望リポートが道しるべに
原油
ニューヨーク原油は続伸。需給のタイト化に押し上げられ、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物はバレル当たり83ドル台に乗せた。10月以来の高値を付けた上昇局面が継続している。
ウクライナの無人機がロシアの製油所を攻撃し、燃料市場の上昇圧力が高まった。JPモルガン・チェースの試算によれば、無人機攻撃で失われたロシアの製油能力は90万バレル。原油価格に1バレル当たり4ドルのリスクプレミアムを上乗せしている。これにイラクの輸出削減計画が加わった。
ここ数日前からの原油相場上振れで、市場では主要指標のいくつかがプラス幅を広げている。オプション市場では弱気傾斜が数カ月ぶりの鈍さとなった。主要な限月スプレッドはトレーダーが需給のタイト化を価格に織り込んでいることを示唆している。
![Crude Rallies to October Highs | Gasoline futures helping boost crude prices](https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iigkGC0m_qSo/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/60x-1.png)
上段:WTI先物、下段:ガソリン先物
出所:NYMEX
原油相場は年初からほぼ維持してきた狭い取引レンジを抜けた後に弾みが付き、月間ベースで3カ月連続高に向かっている。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」の供給抑制策が、価格押し上げに寄与した。イラクは今週、減産を順守すると確約した。
18日に発表された統計によれば、 中国の工業生産と固定資産投資は1-2月に堅調な伸びを示し、いずれも予想を上回った。製油所での原油精製量は過去最高を記録した。一方の米国では依然強い経済を理由に、FOMCは利下げ開始に対して慎重になっている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI4月限は前日比75セント(0.9%)高い1バレル=83.47ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は49セント上昇の87.38ドル。
金
ニューヨーク金相場は小反落。日銀がマイナス金利を解除した後の市場では、英米の金融政策決定が待たれている。
米国では先週、予想より強いインフレ統計を受けて金融政策の緩和転換時期と規模の予想が後退した。金利の上昇は利息を生まない金投資には通常マイナスに働く。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「短期的に金市場が苦しいのはほぼ間違いない。ドルと国債利回りの上昇が続けばなおさらだ」と話す。金価格の下げ幅次第では「ヘッジファンドからの売り浴びせが誘発される」可能性があるという。
![Gold Holds Near Record Levels | Traders await Fed rate decision](https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i6xDuTFnVS60/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/60x-1.png)
金スポット価格
出所:ブルームバーグ
この日は円が対ドルで下げ、それに伴って金価格は下落。それでも金は2月中旬からの急伸を経て、なお過去最高値圏で推移している。上昇を支えてきた一因である中国での強い需要は、今では減速したもようだ。
2月にスイスから中国・香港に輸出された金は157.6トンと、1月の207トンから25%ほど減少した。
ニューヨーク時間午後2時27分現在、金スポット価格は前日比4.62ドル(0.2%)下げて1オンス=2155.74ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限も0.2%安の2181.20ドルで終了した。
原題: ‘Most-Crowded Trade’ Drives S&P 500 to New Record: Markets Wrap(抜粋)
Yen Falls to 2024 Low as Rate Gap Undercuts BOJ’s Historic Hike(抜粋)
Dollar Gains Ahead of FOMC; Yen Lags Peers Post-BOJ: Inside G-10(抜粋)
Oil Rises on Russian Refinery Outages, Iraq Export Reduction(抜粋)
Gold Slips as Focus Turns to Fed After BOJ Ends Negative Rates(抜粋)
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