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日銀会合注目点:YCC修正の有無、新たな物価見通しと植田総裁会見 - ブルームバーグ

日本銀行が27、28日に開く金融政策決定会合では、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の見直しの有無が最大の焦点となっている。インフレ圧力が継続する中、新たに示す経済・物価シナリオと植田和男総裁の記者会見から、物価目標実現までの距離を探ることになる。

  ブルームバーグがエコノミスト50人を対象に12日から18日まで実施した調査では、82%が今回会合では政策変更はないとみている。残りの18%はYCCの修正または撤廃を決めると予想している。

日銀7月会合での政策修正予想が後退、総裁のハト派継続で-サーベイ

  複数の関係者によると、日銀は現時点で市場機能や金融仲介機能といった副作用に、長期金利の許容変動幅の再拡大などYCCの修正で対応する必要性は乏しいとみている。賃上げを伴う持続的・安定的な2%の物価目標の実現に向け、YCCを含む大規模な金融緩和を維持し、引き続き経済の下支えに取り組む姿勢を示す可能性が大きい。

日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識-関係者

  一方、長期金利を操作する異例のYCCを巡っては、市場機能への影響などコストが大きい政策として早期の修正・撤廃を求める政策委員もおり、見直しは議論の対象になるとみられている。全員一致で現行の金融緩和策を続けてきた政策委員の投票行動に変化が出るかも注目だ。

日銀7月会合での政策修正予想は後退

出所:ブルームバーグ・サーベイ

  日銀会合に先立ち、米連邦準備制度理事会(FRB)は26日に政策金利を0.25ポイント引き上げることを決定。パウエル議長が9月に追加利上げに動くのかはデータ次第と発言したことで見送り観測が強まり、ドル・円相場は下落した。欧州中央銀行(ECB)は27日に0.25ポイントの利上げを決めると見込まれており、日銀の政策決定が円相場に及ぼす影響が注目される。

  今会合でYCCの見直しが見送られても、早期の修正・撤廃を見込む市場の思惑はくすぶり続ける可能性が大きい。ブルームバーグ調査では、日銀がYCCを修正または撤廃する時期について、10月会合までの実施を予想するエコノミストが合計で52%と過半数を占めた。  

  ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、YCC修正は10月会合がメインシナリオとし、「流動性の低下など現行YCCによる債券市場への悪影響は続いているため、遠からず実施される」と予想している。

ブルームバーグ・エコノミクスの見方

「7月以降の円高方向への動きや長期金利の上昇は、今回の決定会合で植田総裁が黒田前総裁が用いたようなサプライズによってYCCが微調整されると市場の一部が予想していることを示唆している。しかし、われわれは、他の大半のフォーキャスターと同様、日銀は今回も動かないと考えている」

木村太郎シニアエコノミスト

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展望リポート

  会合では、新たな経済・物価情勢の展望( 展望リポート)も議論される。足元の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は日銀の想定よりも上振れて推移している。関係者によると、2023年度のコアCPI見通しは従来の前年度比1.8%上昇から2.5%程度上昇への大幅な上方修正となる公算が大きい。

日銀、23年度物価見通し2.5%程度に大幅上方修正の公算大-関係者

  一方で、海外経済や来年の賃上げの動向など先行き不確実性が大きい状況に変化はなく、24、25年度は現在の2.0%上昇、1.6%上昇から小幅の修正にとどまる見通し。日銀が持続的・安定的な2%の物価目標の実現に自信が持てない状況に変化はないという。

  企業の積極的な価格転嫁や人手不足などを背景に、賃金と物価の好循環への期待は強まりつつある。新たな経済・物価シナリオを踏まえ、植田総裁が記者会見で2%の物価安定目標の実現の確度やYCCを含めた先行きの金融政策運営について、どのような情報発信を行うのかを市場は注視している。

他のポイント

  • YCCの修正・撤廃が行われた場合、市場の関心は次の段階として金融政策の正常化に向かいやすい。象徴と言える短期マイナス金利(現行マイナス0.1%)の解除について、エコノミスト調査では全員が24年以降を見込み、4割超は25年以降と回答
  • 足元の底堅い個人消費や堅調な設備投資計画などを反映し、景気の総括判断の上方修正を議論も。従来の「持ち直している」から「回復」などに表現を強める公算が大きい
  • コアCPIの先行きは、輸入物価の上昇の影響のはく落などでプラス幅を縮小していくとの見方は変わらず。前回の展望リポートで「今年度半ばにかけて、2%を下回る」とした表現は後ずれや修正となる可能性も
  • 23年度のコアCPIの大幅上方修正に伴い、同年度見通しのリスクバランスは従来の「上振れリスクの方が大きい」から中立などに変更も。「下振れリスクの方が大きい」としている25年度が変化するか注目
  • 展望リポートを議論する会合には金融機構局が出席し、金融システム動向について報告。欧米の金融不安は足元で一服しており、日本の金融システムは全体として安定性を維持しているとの評価を維持する見通し
Bank of Japan Headquarters Ahead of Kuroda's Last Meeting

日本銀行本店

Source: Bloomberg

現在の政策運営方針

  • 日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用
  • 長期金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債を買い入れ
  • 長期金利の変動幅を上下0.5%程度とし、明らかに応札が見込まれない場合を除き、10年国債利回り0.5%での指し値オペを毎営業日、実施する
  • 金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、各年限において機動的に買い入れ額の増額や指し値オペを実施する
  • ETFとJ-REITはそれぞれ年間約12兆円、約1800億円に相当する残高増加ペースを上限に必要に応じて買い入れ
  • CPは約2兆円の残高維持。社債は感染症拡大前と同程度のペースで買い入れ、残高を感染症拡大前の水準(約3兆円)へ徐々に戻していく。ただし、社債の買い入れ残高の調整は発行環境に十分配慮して進める

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